【超入門】Wi-Fiルーターの本当の選び方:「2LDK向け」は信じちゃダメ!

この記事を書いている人について

たか(「わが家の光回線ガイド」運営者)

15年以上にわたり光回線アドバイザーとして、お客様のインターネット環境をサポートしています。

大手家電量販店で5年間、その後ガス会社で15年以上勤務した経験から、光回線だけでなく電気やガスといった生活インフラ全般の知識も豊富です。

かつて販売の現場で「専門用語が難しくて分からない」「どのプランが自分に合うのかさっぱり…」というお客様の声を数多く聞いてきました。その経験から、このサイトでは難しい情報をかみ砕き、一人ひとりの “相談相手” として、どこよりも分かりやすく正直な情報をお届けすることを心がけています。

    1. この記事を書いている人について
  1. はじめに:お店の言うことを、うのみにしていませんか?
    1. 「理想のおうち」と「現実のおうち」
    2. 快適なWi-Fiのための「3つのものさし」
  2. 第1章:Wi-Fiの本当の敵は「家のつくり」にあり!
    1. 1.1 見えない壁:家の材質が電波を邪魔する
    2. 1.2 家の中の隠れた邪魔者たち
    3. 1.3 空中の渋滞:他の電化製品とのケンカ
    4. 1.4 ルーターの「特等席」を見つけよう
  3. 第2章:むずかしい言葉を解読しよう!
    1. 2.1 Wi-Fiにも世代がある (Wi-Fi 5, 6, 6E, 7)
    2. 2.2 どの道を選ぶ? 電波の通り道 (2.4GHz, 5GHz, 6GHz)
    3. 2.3 賢い交通整理の技術
  4. 第3章:【間取り別】Wi-Fiの電波、どれに繋ぐのが正解?賢い使い分け術
    1. ケース1:ワンルーム・1Kのお部屋
    2. ケース2:アパート・マンション(2LDKなど)
    3. ケース3:一戸建て(2階建て・3階建て)
  5. 第4章:あなたのスマホやPCはどの世代?古い機械が及ぼす影響
    1. 4.1 自分の機械のWi-Fi世代を調べてみよう
    2. Wi-Fi世代の一覧表
    3. 4.2 古い機械がネットワーク全体の足を引っ張る理由
  6. 第5章:自分にぴったりのルーターを見つける4つのステップ
    1. ステップ1:家のインターネット回線を確認しよう(細い水道管に強力なポンプは不要)
    2. ステップ2:インターネットに繋ぐ機械を全部数えよう(未来の分も忘れずに)
    3. ステップ3:インターネットの「使い方」を考えよう(ネットを見るだけ? ゲームもする?)
    4. ステップ4:家の環境と使い方を合体させて、最適なルーターを選ぼう
  7. 第6章:究極の安定を求めて。「有線LAN」という選択肢
    1. 6.1 有線LANの良いところ、ちょっと不便なところ
    2. 6.2 LANケーブルにもランクがある!「カテゴリ」を選ぼう
    3. 6.3 配線場所に合わせよう!ケーブルの「形」いろいろ
  8. 第7章:電波が届かない!を解決する「メッシュWi-Fi」という切り札
    1. 7.1 メッシュWi-Fiって何? チームで家をカバーする技術
    2. 7.2 メッシュWi-Fi vs. 安い「中継器」
    3. 7.3 メッシュWi-Fiの良いところ・悪いところ
    4. 7.4 メッシュWi-Fiが本当に必要なのはこんな人
  9. 第8章:買ってからが大事!ルーターの安全を守る方法
    1. 8.1 玄関の鍵は最新式に!「WPA3」でしっかり戸締り
    2. 8.2 ルーターの健康診断「ファームウェアアップデート」
  10. 結論:もう迷わない!最終チェックリスト
    1. あなたに合うルーターの価格帯
    2. 買う前の最終チェックリスト

はじめに:お店の言うことを、うのみにしていませんか?

Wi-Fiルーターの箱に書かれた「ワンルーム向け」や「家族みんなで使える2LDK向け」という言葉。これを頼りに選んでいませんか?実は、その選び方、ちょっと待った!多くの場合、これらの言葉は実際のあなたの家には当てはまらず、がっかりの原因になってしまいます。快適なインターネット生活は、お店の宣伝文句ではなく、あなたの「暮らし」に合わせて選ぶことから始まります。

「理想のおうち」と「現実のおうち」

メーカーが言う「3階建てでも大丈夫!」という性能は、まるで実験室のような「理想のおうち」で測られたものです。それは、家のど真ん中にルーターを置き、周りには電波を邪魔するものが何もなく、壁は電波を通しやすい木でできている、という特別な環境です。でも、現実の私たちの家ではどうでしょう?家の真ん中にルーターを置いたら邪魔ですし、インターネットの線は部屋の隅っこから出ていますよね。この「理想」と「現実」のギャップこそが、「お店で言われた通りにならない!」という不満の原因なのです。

快適なWi-Fiのための「3つのものさし」

本当に自分に合ったルーターを選ぶには、部屋の広さだけでは不十分です。大切なのは、次の「3つのものさし」で自分の家を測ってみることです。

  1. 家のつくり (環境): あなたの家は何でできていますか?壁の材質や家具の配置が一番大事です。
  2. 使う機械 (端末): スマホやパソコン、ゲーム機など、インターネットにつなぐ機械が全部で何台ありますか?
  3. 使い方 (用途): 家族みんながインターネットで何をしていますか?動画を見たり、ゲームをしたり?

このガイドを読めば、あなたもお店の言葉に惑わされず、自分の暮らしにぴったりのルーターを自信を持って選べるようになります。


第1章:Wi-Fiの本当の敵は「家のつくり」にあり!

この章では、Wi-Fiの電波を弱くしてしまう原因を探ります。「広さ」ではなく、あなたの家がWi-Fiにとってどれだけ「過酷な環境か」を考えてみましょう。

1.1 見えない壁:家の材質が電波を邪魔する

Wi-Fiは目に見えない電波ですが、壁やドアにぶつかると弱くなってしまいます。家の壁が何でできているかが、快適さを決める最大のポイントです。

  • 電波が通りやすい壁: 木、石膏ボード、ガラス。これらは電波が比較的スイスイ通り抜けます。多くのルーターの性能は、こうした壁を前提にしています。
  • 電波をさえぎる壁(Wi-Fiキラー): コンクリートと金属。これらが電波の最大の敵です。特に鉄筋コンクリートの壁は、電波の力を7~8割も弱めてしまいます。鉄筋コンクリートのマンションでWi-Fiが繋がりにくいのは、これが原因です。
  • 意外な敵: 新築の家で使われる、まだ乾ききっていない石膏ボードも、水分を含んでいるためコンクリートのように電波を邪魔することがあります。

つまり、同じ広さでも、鉄筋コンクリートのマンションは、木造の家よりもずっとWi-Fiにとって「過酷な」環境なのです。この「環境の過酷さ」を考えることが、正しいルーター選びの第一歩です。

1.2 家の中の隠れた邪魔者たち

壁以外にも、家の中にある意外なものがWi-Fiの電波を弱くします。

  • 水: Wi-Fiの電波は水に吸い取られやすい性質があります。水槽や大きな花瓶の近くは要注意です。私たちの体も約60%が水分なので、人がたくさん集まる場所も電波が弱まりやすくなります。
  • 金属: 金属は電波を跳ね返してしまいます。金属製の棚、冷蔵庫、アルミサッシの窓などが電波を乱す原因になります。
  • 分厚い家具や本棚: ぎっしり本が詰まった本棚なども、電波を吸い取って弱くしてしまいます。ルーターを家具の後ろに隠すのはやめましょう。

1.3 空中の渋滞:他の電化製品とのケンカ

あなたの家のWi-Fiルーターだけが電波を使っているわけではありません。他の電化製品が出す電波とケンカして、インターネットが遅くなったり、途切れたりすることがあります。

特に「2.4GHz」という種類の電波は、電子レンジ、Bluetoothスピーカー、コードレス電話など、たくさんの家電が使うため、非常に混雑しています。マンションでは、お隣さんの家のWi-Fiともケンカしてしまいます。

1.4 ルーターの「特等席」を見つけよう

これらの邪魔者をふまえて、ルーターを置くべき場所のルールを決めましょう。

  • ルール1:家の真ん中、そして少し高い場所へ: ルーターの電波は、本体からボールのように360度に広がります。なので、できるだけ家の中心に近い、床から1~2mくらいの高さに置くのが理想です。こうすることで、家全体に無駄なく電波を届けられます。
  • ルール2:周りに何もない、開けた場所へ: ルーターを棚の中やテレビの裏に隠さないでください。ルーターを裸電球だと考えてみましょう。周りに邪魔なものがなければ、その光(電波)は遠くまで届きます。
  • ルール3:邪魔者からは離す: 電子レンジ、金属製品、水槽などからは離して置きましょう。

しかし、ほとんどの家では、インターネットの線は部屋の隅にあり、家の真ん中にルーターを置くのは難しいですよね。この現実を考えると、とても大切なアドバイスがあります。それは、「箱に書いてある家の広さよりも、ワンランク上の性能のルーターを選ぶ」ということです。そうすれば、置き場所がベストでなくても、その分をパワーで補うことができます。


第2章:むずかしい言葉を解読しよう!

この章では、お店で見るむずかしい言葉を、誰にでもわかるように解説します。これを読めば、何を買おうとしているのかがしっかり理解できます。

2.1 Wi-Fiにも世代がある (Wi-Fi 5, 6, 6E, 7)

Wi-Fiの「規格」は、道路の世代のようなものです。新しい世代ほど、道が広くて速く、交通整理も上手になります。

  • Wi-Fi 5: 少し前の世代の道路。普通に使う分にはまだ大丈夫ですが、たくさんの車(スマホやPC)が同時に走ると渋滞しがちです。
  • Wi-Fi 6: 今の主流。ただ速いだけでなく、一番の得意技は「たくさんの機械が同時に繋がっても渋滞しない」ことです。これは、たくさんのスマート家電を使う現代の家庭には必須の能力。これから買うなら、最低でもWi-Fi 6を選びましょう。
  • Wi-Fi 6E: Wi-Fi 6のパワーアップ版。新しく「6GHz」という超快適な専用道路が使えます。今までの道路の隣に、誰も走っていないピカピカの高速道路ができたようなイメージです。
  • Wi-Fi 7: 最新・最強の世代。Wi-Fi 6の約4.8倍も速く、道路の幅も2倍に。さらに、複数の道路を同時に使って通信するスゴ技も持っています。まだ最先端ですが、いずれこれが当たり前になります。

2.2 どの道を選ぶ? 電波の通り道 (2.4GHz, 5GHz, 6GHz)

Wi-Fiには、電波が通るための道がいくつかあります。それぞれに得意・不得意があります。

  • 2.4GHz(一般道): 遠くまで届き、壁などの障害物にも比較的強いのが長所です。しかし、スピードは遅めで、電子レンジや近所のWi-Fiなどと道が一緒なので、いつも渋滞しています。
  • 5GHz(高速道路): Wi-Fi専用の道なので、他の家電に邪魔されにくく、とても速くて快適です。弱点は、壁などの障害物に弱く、電波が遮られやすいことです。
  • 6GHz(貸し切りハイウェイ): Wi-Fi 6Eや7だけで使える特別な道。5GHzよりさらに速く、今はまだガラガラです。ただし、これも障害物には弱く、遠くまでは届きません。

この知識を使って、あなたの家の機械たちを上手に振り分けてみましょう。

特徴2.4GHz (一般道)5GHz (高速道路)6GHz (貸し切りハイウェイ)
スピード遅い速いめちゃくちゃ速い
届く距離遠くまで届く短い短い
壁への強さ強い弱い弱い
渋滞いつも混んでる少ないほぼ無い
おすすめの機械スマート家電、ルーターから遠い部屋のスマホ4K動画、オンラインゲーム、仕事のビデオ会議最新のゲーム機、8K動画、大きなファイルのやり取り

2.3 賢い交通整理の技術

最近のルーターには、渋滞をなくすための賢い機能がついています。

  • MU-MIMO (マルチユーザーマイモ):
    • 例えるなら: 昔のルーターは、一度に一人にしか飲み物を出せないバーテンダー。他の人は順番待ちでした。でもMU-MIMO対応ルーターは、何本も腕があって、同時にたくさんの人に対応できるスーパーバーテンダーです。
    • これがあれば、家族みんなが同時にスマホを使っても、待ち時間が少なくなり、サクソク動くように感じます。
  • ビームフォーミング:
    • 例えるなら: 昔のルーターは、部屋全体をぼんやり照らす裸電球。でもビームフォーミング対応ルーターは、あなたのスマホがどこにあるかを見つけて、そこをめがけて光を当てるスポットライトです。
    • これにより、特定の機械への電波が強くなり、繋がりやすく、遠くまで届くようになります。

注意点: 箱に書いてある「最大速度」は、あくまでテストでの最高記録。実際にはそのスピードは出ません。Wi-Fi 6の本当の価値は、こうした交通整理の技術で、たくさんの機械が繋がったときの「体感速度」を上げてくれる点にあります。


第3章:【間取り別】Wi-Fiの電波、どれに繋ぐのが正解?賢い使い分け術

「私の家では、どの機械をどの電波に繋ぐのが一番いいの?」という疑問に、家のタイプごとにお答えします。先ほどの「一般道」「高速道路」「貸し切りハイウェイ」の例えを思い出してくださいね。

ケース1:ワンルーム・1Kのお部屋

  • 結論:基本は「5GHz(高速道路)」をメインで使いましょう!
  • 解説:
    ワンルームのようなお部屋は、ルーターと使う場所の距離が近く、壁などの邪魔者も少ないのが特徴です。そのため、壁に弱いという5GHzの弱点があまり気になりません。速度が速く、他の家電とケンカしにくい5GHzをメインで使うのが一番快適です。
  • 具体的な使い分け:
    • 5GHz/6GHzに繋ぐもの: スマートフォン、パソコン、タブレット、ゲーム機、テレビなど、速度が求められるものはすべてこちらへ。特にオンラインゲームや高画質の動画を見るなら必須です。
    • 2.4GHzに繋ぐもの: スマートスピーカーやスマートプラグ、お掃除ロボットなど、5GHzに対応していない古い機械や、特に速さを必要としないものだけを繋ぎましょう。

ケース2:アパート・マンション(2LDKなど)

  • 結論:「場所」と「壁」で使い分けるのが成功のコツ!
  • 解説:
    マンションでは、部屋を仕切る壁(特に鉄筋コンクリートだと電波を通しにくい)と、周りのお部屋のWi-Fi電波との「混雑」が大きな課題になります。
  • 具体的な使い分け:
    • ルーターと同じ部屋(リビングなど): 迷わず「5GHz」か、対応機器があれば「6GHz」に繋ぎましょう。テレビでの4K動画視聴や、仕事用のパソコン、ゲーム機など、絶対に安定させたい機器はここで使うのがベストです。
    • 壁を1枚へだてた隣の部屋(寝室など): まずは「5GHz」で繋いでみてください。もし電波が弱くて途切れるようなら、壁を通り抜けやすい「2.4GHz」に切り替えてみましょう。
    • ルーターから一番遠い部屋: 「2.4GHz」の方が安定して繋がる可能性が高いです。壁に強いという長所がここで活きてきます。

ケース3:一戸建て(2階建て・3階建て)

  • 結論:階が違うなら「2.4GHz」の出番!でも、それだけでは限界も。
  • 解説:
    一戸建ての最大の敵は「床」と「天井」です。階をまたぐと、電波は驚くほど弱くなってしまいます。
  • 具体的な使い分け:
    • ルーターを置いている階: リビングや書斎など、メインで使う場所ではもちろん「5GHz/6GHz」を使い、最高のパフォーマンスを享受しましょう。
    • ルーターと違う階(例:1階にルーター、2階の寝室で使う): 障害物に強い「2.4GHz」でないと、そもそも電波が届かないことがよくあります。スマホでSNSを見たり、スマートスピーカーで音楽を聴いたりする程度なら、2.4GHzで十分です。
    • 【重要】違う階でも動画やゲームを快適にしたいなら:
      強力なルーターを1台置くだけでは、違う階まで高速な5GHzの電波を届けるのは非常に困難です。そんなときこそ、「メッシュWi-Fi」の出番です。各階に子機を置くことで、家全体をまるごと高速道路にすることができ、どこにいても快適なインターネットが楽しめます。

第4章:あなたのスマホやPCはどの世代?古い機械が及ぼす影響

最新のすごいルーターを買っても、インターネットが速くならないことがあります。その原因は、あなたの使っているスマホやパソコンにあるかもしれません。速い道路(ルーター)を走るには、それに見合った性能の車(スマホやPC)が必要なのです。

4.1 自分の機械のWi-Fi世代を調べてみよう

自分のスマホやパソコンが、どの世代のWi-Fiに対応しているか知っていますか?簡単な確認方法があります。

  • Wi-Fiマークの横の数字を見る: 一部のスマホやパソコンでは、Wi-Fiに繋いでいるとき、扇形のマークの横に「5」や「6」といった小さな数字が表示されることがあります。これが対応しているWi-Fiの世代を表しています 。
  • 設定画面で確認する: 数字が表示されない場合は、設定画面から確認できます。
デバイスの種類確認のしかた
iPhone「設定」アプリを開き、「Wi-Fi」をタップします。接続しているWi-Fiの名前の横にある「i」マークをタップすると、周波数帯(5GHzなど)が確認できます。規格の世代までは表示されないことが多いです 。
Android「設定」から「ネットワークとインターネット」→「インターネット」と進み、接続しているWi-Fiの横の歯車マークをタップします。詳細画面の「タイプ」や「Wi-Fi規格」といった項目で確認できます 。
Windowsタスクバー右下のWi-Fiマークをクリックし、「プロパティ」を開きます。下の方にある「プロトコル」の欄に「Wi-Fi 6 (802.11ax)」のように表示されます 。
Mac「option」キーを押しながら、画面右上のWi-Fiマークをクリックします。「PHYモード」の項目に「802.11ax」のように表示されます 。

Wi-Fi世代の一覧表

ご自身で確認した規格名がどの世代にあたるか、下の表でチェックしてみてください。

世代の名前 (通称) 規格名 (専門用語) 特徴
Wi-Fi 7 IEEE 802.11be 未来の超高速規格! 複数の周波数帯を束ねて通信するため、遅延が極めて少なく、速度も圧倒的に速い。VR/ARやクラウドゲームに最適。
Wi-Fi 6E IEEE 802.11ax 渋滞しにくい新しい道路(6GHz帯)が使える。とても速くて快適。
Wi-Fi 6 IEEE 802.11ax スマホやゲーム機など、たくさんの機器を同時に繋いでも安定しやすい。
Wi-Fi 5 IEEE 802.11ac 一世代前。動画視聴など、十分な速度が出るので現在も広く使われている。
Wi-Fi 4 IEEE 802.11n 少し古めの世代。インターネット検索など日常的な利用なら問題ない。

💡ポイント
お使いのスマホやパソコンが最新のWi-Fi 7に対応していても、ご家庭のWi-Fiルーター(親機)が古い世代だと、その古い世代のスピードしか出ません。最高のパフォーマンスを体験するには、スマホ・パソコンとルーターの両方が同じ新しい世代に対応している必要があります。

4.2 古い機械がネットワーク全体の足を引っ張る理由

「最新のWi-Fi 6ルーターを買ったのに、なんだか速くない…」。その原因は、たった一台の古い機械かもしれません。

Wi-Fi通信は、ルーターという先生が、スマホやパソコンといった生徒たちと順番にお話するようなものです。新しい生徒(Wi-Fi 6対応機)は話すのがとても速いのですが、古い生徒(Wi-Fi 4対応機など)は話すのがとてもゆっくりです。

先生(ルーター)は、ゆっくりな生徒に合わせて、じっくり時間をかけてお話しないといけません。その間、他の速い生徒たちは、じっと待たされることになります。これが、ネットワーク全体の「渋滞」を引き起こすのです。

最新のWi-Fi 6には、たくさんの生徒と同時に効率よく話せる「OFDMA」や「MU-MIMO」といったスゴい技術がありますが、古い機械はこれらの技術に対応していません 。そのため、古い機械と通信するときは、ルーターも昔ながらの「一人ずつ順番に」という非効率な方法に合わせるしかないのです。

さらに、古い機械はセキュリティも弱点です。最新の安全な鍵(WPA3)に対応していないことが多く、家全体のインターネットの玄関の鍵が、一つだけ古いままになってしまうような危険性があります。

もし、どうしても速度が改善しない場合は、接続している機械の中に極端に古いものがないか一度チェックしてみることをお勧めします。その一台を買い替えるだけで、家中のWi-Fiが劇的に快適になる可能性があります。


第5章:自分にぴったりのルーターを見つける4つのステップ

さあ、これまでの知識を使って、あなただけの最高のルーターを見つけましょう。この4つのステップで、誰かのオススメではなく、本当にあなたに合った一台が分かります。

ステップ1:家のインターネット回線を確認しよう(細い水道管に強力なポンプは不要)

ルーターは、インターネットの速さを決める部品の一つにすぎません。契約しているインターネット回線の速さに見合ったものを選びましょう。

  • 速い光回線(1ギガなど)を契約している人: せっかくの速い回線を無駄にしないために、新しい世代(Wi-Fi 5以上)のルーターが必要です。古いルーターだと、ルーターが原因で遅くなってしまいます。
  • 普通の回線を契約している人: 一番高い最新ルーターは必要ありません。性能の良いWi-Fi 6モデルで十分快適になります。

ステップ2:インターネットに繋ぐ機械を全部数えよう(未来の分も忘れずに)

次に、Wi-Fiに繋ぐものをすべて書き出してみましょう。スマホ、パソコン、タブレットはもちろん、テレビ、ゲーム機、スマートスピーカー、防犯カメラ、お掃除ロボットまで、全部です。

ルーターには「〇台まで繋げます」という目安があります。これを超えると、動きが不安定になったり、遅くなったりします。

ポイント: 今使っている機械の数よりも、余裕のあるモデルを選びましょう。これからスマート家電が増えることを見越して、普通の家庭なら20~30台くらい繋げるモデルだと安心です。

ステップ3:インターネットの「使い方」を考えよう(ネットを見るだけ? ゲームもする?)

機械の数だけでなく、インターネットで「何をするか」も重要です。

  • ニュースを見たり、メールを送るのが中心: あまりパワーは必要ないので、ほとんどのルーターで大丈夫です。
  • きれいな画質の動画(4Kなど)を見る: たくさんのデータを安定して送り続ける力が必要です。動画が途中で止まらないように、Wi-Fi 6対応のルーターがおすすめです。
  • オンラインゲームで対戦する: スピードよりも、操作との「ズレ(ラグ)」の少なさが命。ゲームの通信を優先してくれる機能がついた「ゲーミングルーター」がベストです。ただし、一番確実なのは、今でも有線で繋ぐことです。
  • 家で仕事をする(ビデオ会議など): とにかく「安定」が第一。家族が動画を見ていても会議が途切れないように、たくさんの機械に強いMU-MIMOなどの機能がついたルーターが必要です。

ステップ4:家の環境と使い方を合体させて、最適なルーターを選ぼう

最後に、これまでのステップを全部まとめます。第1章で考えた「家の過酷さ」と、あなたの使い方を組み合わせて、どのクラスのルーターが必要か決めましょう。

  • 環境おだやか / 使い方もシンプル: ワンルーム、木造の家。繋ぐ機械は少なめ。ネットを見るのが中心。
    • → 入門クラスのWi-Fi 6ルーターで十分です。
  • 環境ふつう / 一般的な使い方: 2LDK~3LDK。繋ぐ機械は10~20台。動画を見たり、家で仕事をしたりする。
    • → バランスの取れた中級クラスのWi-Fi 6ルーターがおすすめです。
  • 環境過酷 / ヘビーな使い方: 広い家、壁は鉄筋コンクリート。繋ぐ機械は20台以上。家族が同時に4K動画とオンラインゲームをする。
    • → 高性能なハイエンドクラスのWi-Fi 6/6E/7ルーターか、次の章で説明するメッシュWi-Fiが必要です。

最終的な快適さは、「インターネット回線」「ルーター」「家の環境」「使う機械」という鎖の一番弱いところで決まります。最高のルーターと回線があっても、コンクリートの壁の向こうで古いスマホを使っていたら、快適にはなりません。この全体のバランスを考えることが、買ってからがっかりしないための秘訣です。


第6章:究極の安定を求めて。「有線LAN」という選択肢

Wi-Fi(無線)が便利なのは間違いありませんが、「絶対に途切れたくない」「一番速いスピードで楽しみたい」というときには、「有線LAN接続」が最強の味方になります。

6.1 有線LANの良いところ、ちょっと不便なところ

パソコンやゲーム機を、LANケーブルという線で直接ルーターに繋ぐのが有線LANです。

  • 良いところ:
    • とにかく安定している: 電波の邪魔が入らないので、通信がとても安定します。大事なビデオ会議や、負けられないオンラインゲームに最適です。
    • スピードが速い: 無線よりも速いスピードが出やすいのが特徴です。
    • 安全性が高い: ケーブルを物理的に繋がないとインターネットに入れないので、悪い人に電波を盗まれる心配がありません。
  • ちょっと不便なところ:
    • ケーブルが邪魔: 部屋にケーブルを這わせる必要があるので、見た目がごちゃごちゃしたり、足を引っかける危険があります。
    • 場所が固定される: ケーブルが届く範囲でしか使えません。スマホやタブレットは基本的に繋げません。

6.2 LANケーブルにもランクがある!「カテゴリ」を選ぼう

LANケーブルには「カテゴリ」というランクがあり、数字が大きいほど性能が良くなります。ケーブルの表面に「CAT.6A」のように印字されているので確認できます 。

  • Cat5e / Cat6: 一般的な光回線(1Gbps)なら、このランクで十分快適です。ネットを見たり、動画を楽しんだりするのに困ることはないでしょう 。
  • Cat6A: 「10ギガ」のような超高速の光回線を契約しているなら、このランクを選びましょう。回線のパワーを最大限に引き出せます。将来のために、今からこれを選んでおくのも賢い選択です 。
  • Cat7以上: 主に会社などで使われるプロ仕様です。家庭で使うには特別な設定が必要な場合があり、かえって通信が不安定になることもあるので、無理に選ぶ必要はありません 。

6.3 配線場所に合わせよう!ケーブルの「形」いろいろ

LANケーブルには、配線しやすいように色々な形があります。

  • スタンダードタイプ: 最も一般的な丸い形のケーブル。丈夫でノイズ(邪魔な電波)にも強いので、迷ったらこれを選べば間違いありません。長い距離を配線するのにも向いています 。
  • スリムタイプ: スタンダードより細くて柔らかいケーブル。狭い場所や家具の裏側など、ごちゃごちゃした場所への配線に便利です 。
  • フラットタイプ: きしめんのように平べったいケーブル。カーペットの下やドアの隙間に隠して配線できるので、部屋の見た目をスッキリさせたいときに最適です 。

ただし、スリムタイプやフラットタイプは、スタンダードタイプに比べて少しだけノイズや引っ張りに弱いので、踏みつけたり無理に曲げたりしないように気をつけましょう 。


第7章:電波が届かない!を解決する「メッシュWi-Fi」という切り札

もし、あなたの家がWi-Fiにとって「過酷な環境」だと分かったら、この「メッシュWi-Fi」が最強の解決策になるかもしれません。

7.1 メッシュWi-Fiって何? チームで家をカバーする技術

メッシュWi-Fiとは、親玉のルーターと、手下の子分たち(サテライト)がチームを組んで、家全体を網の目のようにWi-Fiエリアで覆うシステムです。

一番のメリットは、家の中を移動してもインターネットが途切れないこと。スマホが自動的に一番電波の強い子分に接続を切り替えてくれるので、ビデオ通話をしながら部屋を移動しても、通話が切れる心配がありません。

7.2 メッシュWi-Fi vs. 安い「中継器」

「電波を広げるだけなら、安い中継器でもいいのでは?」と思うかもしれません。でも、大きな違いがあります。

  • 中継器: ルーターの電波を受け取って、そのまま大きくして飛ばすだけ。安くて手軽ですが、親玉とは別のWi-Fiの名前になるので、移動したら手動で繋ぎ直す必要があります。また、通信速度が半分になってしまうという大きな弱点があります。
  • メッシュWi-Fi: チーム全体で賢く連携し、家じゅうどこでもWi-Fiの名前は一つだけ。子分同士の連携もスムーズなので、速度も落ちにくいのが特徴です。
項目メッシュWi-Fi中継器
Wi-Fiの名前家全体で一つ(自動で切り替え)別々(手動で切り替え)
スピード落ちにくい半分になりやすい
設定アプリで簡単ちょっと面倒
値段高い安い

7.3 メッシュWi-Fiの良いところ・悪いところ

  • 良いところ: 家の隅々まで電波が届く、途切れない、設定が簡単、たくさんの機械を繋いでも安定している。
  • 悪いところ: 値段が高い。ワンルームのような狭い家には不要。細かい設定が苦手なモデルが多い。子分を置くためのコンセントと場所が必要 。

7.4 メッシュWi-Fiが本当に必要なのはこんな人

メッシュWi-Fiは、ただ「広い家」のためだけではありません。「壁が厚いなど、構造的にWi-Fiが届きにくい家」にこそ、一番効果があります。

  • 3階建てや、部屋数がとても多い家
  • 広さに関係なく、壁が鉄筋コンクリートでできている家
  • 難しい設定はいいから、とにかく簡単で途切れないネット環境が欲しい人

どんなに強力なルーターでも、分厚いコンクリートの壁を突き抜けるのは大変です。メッシュWi-Fiは、無理やり壁を突き破るのではなく、壁の両側に基地を置くことで、この問題を賢く解決してくれるのです。


第8章:買ってからが大事!ルーターの安全を守る方法

ルーターは、あなたの家のインターネットの玄関です。買った後も、安全のために少しだけ気にかけてあげましょう。

8.1 玄関の鍵は最新式に!「WPA3」でしっかり戸締り

Wi-Fiのパスワードを守る仕組みは、家の鍵のようなものです。

  • WPA2: 長年使われてきた古い鍵。泥棒に狙われる弱点が見つかっています。
  • WPA3: 最新のとても頑丈な鍵。泥棒がパスワードを盗むのを非常に難しくします 。

アドバイス: これから新しいルーターを買うなら、「WPA3」に対応していることは絶対条件と考えましょう。

8.2 ルーターの健康診断「ファームウェアアップデート」

ルーターの中には、ルーターを動かすための基本プログラム(ファームウェア)が入っています。これはスマホのOSのようなもので、定期的に新しくする必要があります。

  • 例えるなら: アップデートは、ルーターに新しい病気から身を守るためのワクチンを打ってあげるようなものです。

アップデートには、3つの良いことがあります。

  1. 安全になる: 悪いハッカーに狙われる弱点をふさいでくれます 。
  2. 調子が良くなる: 動きが安定したり、性能がアップしたりします 。
  3. 新しい機能が使えるようになることもあります

私たちはパソコンのウイルス対策は気にしますが、ルーターの安全は忘れがち。でも、ルーターが乗っ取られたら、そこに繋がっているスマホやパソコン全部が危険にさらされます。

アドバイス: プログラムを自動で新しくしてくれる機能がついたルーターを選び、その機能を必ずオンにしておきましょう。これが、あなたの家をインターネットの危険から守る、一番簡単で確実な方法です 。


結論:もう迷わない!最終チェックリスト

このガイドで、ルーター選びの基準が「部屋の広さ」ではなく、あなたの「家のつくり」「使う機械」「使い方」にあることが分かったはずです。最後に、予算と合わせて最終確認ができるチェックリストを用意しました。

あなたに合うルーターの価格帯

  • 入門クラス(1万円未満): 一人暮らしや、あまりインターネットを使わない人向け。Wi-Fi 6対応モデルを選びましょう。
  • 中級クラス(1万円~2万円): ほとんどの家庭にちょうど良いバランスのモデル。家族で動画を見たり、家で仕事をしたりするのに最適です。
  • 高級クラス(2万円以上): オンラインゲームを本格的にやる人や、たくさんの機械を繋ぐ人、超高速回線を契約している人向け。最新のWi-Fi 6E/7対応モデルがこの価格帯です。
  • メッシュWi-Fi(1万5千円以上~): 広い家や、壁が厚くて電波が届きにくい家のための「問題解決ツール」です。

買う前の最終チェックリスト

  1. [ ] あなたの家に来ているインターネットの速さは十分?
  2. [ ] 今、そして2年後、インターネットに繋ぐ機械は全部で何台になりそう?
  3. [ ] 主に何にインターネットを使う?(動画、ゲーム、仕事など)
  4. [ ] あなたの家の壁は何でできてる?(木、コンクリートなど)
  5. [ ] 必要なのは、ルーター1台? それともチームで働くメッシュWi-Fi?
  6. [ ] 検討中のルーターはWi-Fi 6以上の世代?
  7. [ ] たくさんの機械に強い「MU-MIMO」や「ビームフォーミング」はついてる?
  8. [ ] 安全のための最新の鍵「WPA3」に対応してる?
  9. [ ] 自動で健康診断してくれる「ファームウェア自動更新機能」はついてる?
  10. [ ] 実際の置き場所を考えて、家の広さよりワンランク上の性能を選んだ?

このチェックリストがあれば、もうお店の言葉に惑わされることはありません。自信を持って、あなたのインターネット生活を最高に快適にする一台を選んでください。

タイトルとURLをコピーしました